毀誉褒貶相半ばする筆者であり薦めづらい本ではあるが、今後の人生で、ビジネスや起業をを通じて社会を変えたい、成功したいと思っている方々にとっては必見の内容となっている。
この本は筆者のキャリアを通じたビジネス論と、次男の受験を通じた教育論と大きく2つにわけられる。
防衛学校出身というビジネスマンとしては特異なバックグラウンド、そして無謀・誹謗ともいえる大手商社への挑戦というところから彼のキャリアはスタートする。
折口氏の圧倒的な努力と胆力、それをベースとした数々のチャレンジは見事なまでに成功を収めていく。
その成功はジュリアナ東京やグッドウィルなど、時流に乗ったラッキーなビジネスマンという評価して片づけるべきではない。
人生の使命について徹底的に考え、その目標を達成するために何をすべきか、自分に何が足りないかを徹底的に考え、周囲を巻き込みながら社会を動かしてきた「起業家の気迫」というものをこの書籍からは感じることからできた。
自分が社会で何者かになりたいが、何をしたらいいのかわからないという若者には是非この本を手に取って欲しい。
(おそらく筆者の経歴についてバイアスのかかっていない若者の方が純粋に読めると思う。)
リスクテイクと努力の絶対量が筆者には遠く及ばないということを、否が応でも思い知らされる。
但し、この本を読んで卑屈になる必要はなく、これだけ努力した筆者の成功への道筋が決して順風満帆ではないということを知れば、気楽な気持ちになるだろう。
後半は、次男との二人三脚での受験への取り組みを通じた教育論やアメリカ社会の分析が書かれている。
世界における日本のプレゼンスは以前ほどの勢いがなかで、日本人が一流な大学へ入ることは容易なことではない。
学業やリーダシップという個人の能力も当然評価される重要な項目であるが、それと同じくらい受験生のバックグラウンドや所属するコミュニティも含めた大学への貢献が求められるのがアメリカの受験の実情である。
アメリカの一流校には、アジアの財閥や一流企業の子女がゴロゴロいる。彼らは卒業後、ファミリーの経営する会社に戻り、その後継者として母校の知名度向上や寄付金ということで貢献することができるのである。
一方で、折口氏は日本では破産状態であり、莫大な寄付で下駄をはかせるということもできる状態ではない。
そうした状況のなかで、折口氏は愛情をもって次男の可能性を広げるべく、親としてできる限りのサポートを行っていく。
ビジネスの世界では時代を切り拓くパイオニアとして、アメリカでは過酷な受験競争にチャレンジする息子の父親として、「アイアンハート」を持ってチャレンジする筆者の姿から同じ日本人ビジネスマンとして勇気を貰うことができた。
【第1部】光と陰の軌跡~生き方・考え方~ 第1章:わが事業家人生 第2章:少年時代に遡る武道の心と「射止める力」 第3章:ジュリアナ東京、ヴェルファーレ 第4章:グッドウィル、コムスン。そして年商7700億円に 第5章:バッシングの波、奪われた座 第6章:人生のシフトチェンジ、NYで再びの成功へ 【第2部】起業家インキュベーターの実践~ビジネス成功の極意~ 第7章:未来ある経営者を支援する立場に 第8章:本質、センターピンを見極めよ 第9章:経営トップが何よりも重きを置くべきこと 第10章:事業展開における心得 第11章: M&A成功の秘訣 第12章:株式上場の心得 第13章「:なりたい自分」を追求せよ 第14章:すばらしい経営者たち 【第3部】世界で勝つには、戦略的思考力! ~米国流英才教育とトップスクール合格への道~ 第15章:アメリカの国の強さと教育システム 第16章:アカデミックの素地を鍛える英語 第17章:サッカーでアスレティック枠に挑戦 第18章:自信、守り、驕り、成長 第19章:チャンスとフェア 第20章:ゴール
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