「抽象化」とは、複数の事象の共通点を抽出することである。
「抽象」の対義語は「具体」であるが、「抽象」は「分かりにくい」ものであるとされ悪者とされがちである。
Webコンテンツでも「具体的でわかりやすい」ものが良いものとされ、私もブログの記事を書く時は「具体性」というものを相当意識している。(分かりにくいという批判は甘んじて受けるが。)
本書は、民主主義の中で嫌われ者の「抽象」に市民権を与えることをテーマとし、「抽象化」のメリットと必要性、「抽象化」のパターンを教えてくれる。
ビジネスの世界では、より上のポジションに行くほど抽象的な思考が求められる機会が多くなるが、「抽象化」が得意という人は多くはない。
現場で汗をかくことが求められる立場であるうちは、「具体的」にどう行動するかということが重要であり、成果を出すうえで「抽象化」は必要とされない。具体的であるほど、イメージしやすいし、共感はしやすい。
しかし、多くの人を管理するポジションで知的生産を行うためには、必須のツールとして「抽象化」を身につけなければならない。「抽象化」することにより、他の事象への応用が利き、分類してまとめて対応できる。
ビジネスマンとしては、相手と場合に応じて「具体」のメリットと「抽象」のメリットを使い分けることが求められるのである。
本書は様々な抽象化のパターンについても扱われており、他者との議論のレイヤーがかみ合わないと感じる方に是非お勧めしたい。
目次
序章 抽象化なくして生きられない
第01章 数と言葉
第02章 デフォルメ
第03章 精神世界と物理世界
第04章 法則とパターン認識
第05章 関係性と構造
第06章 往復運動
第07章 相対的
第08章 本質
第09章 自由度
第10章 価値観
第11章 量と質
第12章 二者択一と二項対立
第13章 ベクトル
第14章 アナロジー
第15章 階層
第16章 バイアス
第17章 理想と現実
第18章 マジックミラー
第19章 一方通行
第20章 共通と相違
終章 抽象化だけでは生きにくい
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