実在の企業・人物を彷彿とさせる内容で、特に豊臣統一は誰をイメージして書かれているかビジネスマンなら誰でもわかるのでニヤリとさせられる。
本作の内容が事実かフィクションかはわからないが、二人の人物を対照的に書くことで、ファミリービジネスの光と闇、それを巡る登場人物を巧みな文章で丹念に描いたビジネス小説名作である。
叩き上げで出世した武田剛平、トヨトミ本流の血を受け継いだ豊臣統一。
創業家外から異例の社長に就任するも、トヨトミの閉鎖性に反旗を翻して退任することになった武田、無能ながらもその血だけで頂点の席につくことになる統一。
2人の辿ったキャリアは綺麗なコントラストを成している。
社内政治、根回し、評価、派閥、スキャンダル等、大企業で仕事をしたことがあれば、経験したことがあるテーマが随所に散りばめられており、読む方は色々な場面で共感(主に武田に対して)持ちながら一気に読み進めることができると思う。
そして、下世話な社内政治にはとどまらず、筆者が物語に込めた日本企業に対するメッセージ。読み終えた時の感覚が溜まらない。
「車は麻薬と一緒。利便性にどっぷりつかり、一度手にしたら手放せない。」
日本の主要産業である自動車を「麻薬」に例える筆者のセンスと様々な名セリフにほんと感服させられっぱなしであった。
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