ずるい人に騙されたり丸め込まれたりしないために、私たちはどう身を守れば良いのか?
日々のニュースでは、詐欺や悪徳商法のニュースが溢れている。
しかし、学校教育や日々のニュースは注意喚起するばかりで、詐欺師や悪人がどのような心理学的手法を用いているかを教えてくることはない。
本書は、ずるい相手が仕掛けてくる“戦略”のエッセンスをユーモアあふれるケースで描いた社会心理学の名著である。
新版では従来の内容に加えて、ネット時代の広告戦略や無差別テロの原因など、社会を動かす力の秘密も体系的に理解することができる。
頼み事に関して、「気づいたら引き受けていた」「気づいたら買わされていた」という経験は誰しもあると思う。
人間には頭では理解や意識していても、どうしても従わざるを得ない心理トリガーがあるのである。
本書では、このような現象の背後に隠れている社会心理学の原理や法則を紐解き、紹介していく。
「返報性」、「コミットメントと一貫性」、「社会的証明」、「好意」、「権威」、「希少性」という人間が影響力を受ける場面をケースとともにわかりやすく解説している。
人間は素早く判断するために全ての情報を精査することなく、上記の法則によっておおまかな判断をしてしまう。この法則は基本的に正しい方向に我々を導いてくれるが、する賢い人間が悪用するとどうなるか。
生物としての人間が持つ習性により自身にとって不利益なことでさえも受け入れてしまうのである。
自分の意思決定に違和感がある際に、自分の意思決定が主体的なものなのか、他者の巧みなテクニックによって引き起こされた心理的トリガーによるものなのか、一度立ち止まって振り返ることが重要となる。
また、この本に書かれている原理や法則とその防御法を理解することで、容易にだまされにくくなるだけでなく、上手く活用すれば望むような結果を相手から引き出すことができるようになる。
普通の大人であれば無意識に利用している内容や、よく知られた内容も含まれているが、それがケースを通じて深堀りされており、「単に知っているという状態」から「利用できる状態」へと読者を導いてくれる。
この本を読んで以降、生命保険の営業や、営業経験の豊富な顧客とのコミュニケーションで相手の使うテクニックが手に取るようにわかり、彼らと話すのが非常に楽しいものなった。
個人対個人のコミュニケーションだけではなく、「社会的証明」「権威」「希少性」はビジネスの世界でも十分に応用は可能である。
3千円と決して安い本ではないが、値段以上の得るものがきっとある名著である。
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