ある天才バンカーの半生を通じて、日本のバブルを描くビジネスノンフィクション。
若手時代から「伝説のMOF担」(MOF担は財務省との窓口となる役割となる重要な役割)として名を馳せ、平和相互銀行事件の処理で「将来の頭取候補」と目され、イトマン事件の内部告発によって「住友銀行の救世主」と評されながら、スキャンダルで住友銀行を追われることになった國重惇史。
彼は、その後楽天の副会長に転身。そこでもスキャンダルで追われることに。
國重氏が書いた『住友銀行秘史』の内容も凄まじいものであったが、本書の様々なエピソードを読むということバブルがいかに異様なものであったか、そして國重氏が異能なバンカーであったかを読み取ることができる。
大蔵省、日銀、社内外の関係者を思い通りに巻き込みながら、昭和の大経済事件を解決していく國重。しかし、スキャンダルで表舞台を去った後の転落は見るに堪えないところも。
異能であるからこそ、金融マンとして取る必要もないリスクを取ってしまったのかとモ思う。
「ラストバンカー」になることのできなかった男のバンカー人生を通じて、読んだ後は現実は小説のようにいかないということを思い知らされ強烈な後味の悪さが残った。
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