「自分達の頭の中の国境を消す」
自分が何者かを理解する上で有効な方法は、自分とは異質な人間と交わることである。
そして、世界を知ることは、衰退の一途を辿る日本の外には多くのチャンスが残っていることを教えてくれる。
この本はそれぞれの国の魅力や可能性について論じながら、現在の日本の置かれているグローバルな文脈での立場や今後の方向性について、筆者なりの視点から、読者が肌感覚で理解できるように論じられている。
我々の親世代がいまだに抱いているような、「日本は経済大国」という幻想は、世界の実情を知ることで一気に崩れ去るだろう。
また、日本は「おもてなし」の国だからインバウンドで海外から旅行客が来てくれると思うのは大きな間違いであるということにも気づかせてくれる。
勿論、日本人のホスピタリティは世界に誇るべきものの一つではあると思うが、インバウンドの旅行客は日本でサービスを享受することが相対的に割安であるから来てくれるだけである。
海外で生活していると、海外の給与水準や物価水準の高さが単なる通貨安のみによっては説明できないことを教えてくれる。
アメリカやロシアは大国の一角のポジションを辛うじて維持しているが、残念ながら日本やヨーロッパの大半の国々は、既に世界の「経済リーダー」というポジションからは脱落してしまっている。
もしかしたら、そう遠くない未来には日本人がアジアの国々へ出稼ぎにいくような現実が待ち受けているかもしれない。
旅行記としては読むとすると多少の物足りなさは残るし、著者のバイアスのかかった主観によって書かれている部分は多分にあるが、大筋での著者の分析は正しいと思う。
COVID-19の中で、海外旅行に簡単に行けるような日常は戻らないかもしれない。
しかし、それまでに世界を知るための2次情報として、また日本人としての健全な危機意識を持つきっかけとして良い本であると思う。
〈目次〉
はじめに 世界は変わる、日本も変わる、君はどうする
1章 日本はいまどれくらい「安く」なってしまったのか
2章 堀江貴文が気づいた世界地図の変化〈アジア 編〉
3章 堀江貴文が気づいた世界地図の変化〈欧米その他 編〉
4章 それでも東京は世界最高レベルの都市である
5章 国境は君の中にある
特別章 ヤマザキマリ×堀江貴文[対談] 無職でお気楽なイタリア人も、ブラック労働で 辛い日本人も、みんなどこにでも行ける件
おわりに
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