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執筆者の写真Gary Tanaka

金銭教育:デリバティブとは何か?




経済や金融関連のニュースを定期的にウォッチしていると、「デリバティブ(金融派生商品)」という言葉をニュースで耳にしたことがあると思います。

デリバティブがニュースで登場する時は、「●●社がデリバティブで数十億円の損失」といったネガティブな形での報道が多いです。では、デリバティブは危険な金融商品なのでしょうか?

デリバティブが何らかの金融商品であるということは何となく理解している方は多いと思いますが、「デリバティブとは何か」を自分の言葉で説明できる人は多くありません。


今回の記事では、皆さんが「デリバティブとは何か?」を説明できるように解説したいと思います。


デリバティブ(金融派生商品)とは、先物取引、オプション取引、スワップ取引と、それらを複合した取引のことを指します。


デリバティブが何かという説明に対して、いきなり専門用語が3つも出て混乱させてしまっているかもしれません。

でも、ご安心下さい。この記事を読み終えることには、これらの用語も含めて「デリバティブが何か?」を説明できるようになっています。



先物取引とは何か?

投資にはリスクがつきものであり、金融商品を購入した投資家は金融商品の価格の変動リスクを負っています。

そのリスクを最小限に抑える(ヘッジする)手法が「先物取引」と「オプション取引」なのです。

先物取引は、ある金融商品を将来の特定の期日に、現時点で取り決めた価格で取引することを約束するという取引のことです。

例えば、あなたがビジネスでの決済のために1年後に1万ドルが必要だと仮定します。

現在の為替レートが1ドル=100円だとすると、今1万ドルを調達するには100万円が必要になります。

しかし、あなたがドルを必要とするのは1年後です。1年後のドル円のレートはわからず、いくらの円が必要になるのかはわかりません。あなたは将来の為替レートに対してリスクを負うことになります。

そのような場合に、1年後に1ドル=101円でドルを購入する約束をしておけば、101万円で確実に1万ドルを調達することができます。

将来の価格の変動リスクに対して、先物取引により現時点で価格を決めてしまうことで、将来の価格の変動リスクを回避することができるのです。


約束した期日に商品の市場価格が先物取引で約束した価格よりも値上がりすると思えば「買う」約束をして、逆に市場価額が値下がりすると思えば「売る」約束をすることで、期日の時点の市場価格と先物取引で約束した価格(行使価格)の差分の利益を上げるこtも可能になります。


先の例では、1年後の為替レートが1ドル120円になっていれば、あなたは実質的に(120-101)×10,000=19万円を得することになります。



一方で、為替レートが予想とは逆に下がった場合はどうすれば良いでしょうか?

約束した1ドル=101円よりも、ドルが値下がりしそうと判断した時点で、現在の先物取引の買手を探して売るということになります。

そして、期日に安くなった現物を実際に市場で調達して、その商品を約束した価格で、先物取引の買手に売却して決済するということになります。

このように、現在の先物取引に対して、逆の取引をすることを「反対売買」と呼びます



オプション取引とは何か?

先物取引の場合は、期日になった場合は当初約束した価格で取引をする義務を負います

一方で、オプション取引では、「将来取引をする権利」を売買することができます。

オプション取引で取引されるのは、あくまで権利ですので、権利を行使しないという選択をすることもできます。

先の例ですと1ドル=101円で購入できる権利をオプション取引でもっていた場合、期日の為替レートが1ドル=101円以上になれば権利を行使すれば良いですし、1ドル=101円未満であれば権利を行使することなく安い価格で現物を調達すれば良いのです。


先物取引とオプション取引では、現物市場の取引とは反対側のポジションを確保しておくことで、価格の変動リスクを逃れることが可能となります。

本来、先物取引とオプション取引は、企業や投資家がリスクをヘッジしたり、利益を早期に確定するために考えられた保険的な意味合いの強い取引です。

保険的な取引ですので、少額の資金で多額の取引をすることができます。少額の資金でより多額の取引をすることを「レバレッジを効かせる」といいます

期待した通りの方向に価格が動けば、その分より多くの利益を得ることができます。

しかし、予想が外れた時のリスクも大きくなります。

先物取引やオプション取引は本来は保険的な意味合いが強かったのですが、現在では、投資や投機の対象として見なされるようになっています。

リスクをヘッジするための「デリバティブで損失」というニュースが繰り返されるのはこのためです。




スワップ取引とは何か?

最後にデリバティブの1類型であるスワップ取引について説明します。

スワップ取引とは、等価のキャッシュフローを交換する取引のことを指します。

同じ通貨間の異なる種類の金利を交換する金利スワップと、異なる通貨間の異なる種類の金利を交換する通貨スワップに分類されます。

金利スワップでわかりやすいものが、変動金利と固定金利の交換です。

例えば、今後10年間1万円ずつ金利の得られると期待している金融商品があるとします。

しかし、この商品の金利は、公定歩合に応じた変動金利であり、上がる可能性も下がる可能性もあります。

そのような場合に、固定金利で10年間1万円ずつ金利を得られる金融商品を保有している投資家と、金利の部分について受け取る権利を交換する取引が金利スワップです。

金利を固定化することでリスクは回避することができますが、この取引を行う前提としては、固定金利よりも変動金利の方が好ましいと考える投資家を探してこなければなりません。(変動金利はリスクを伴いますが、金利上昇を予測している投資家にとっては利益につながるかもしれないというメリットもあります。)

等価のキャッシュフローを受け取る権利を持つ投資家を探すことは容易ではないため、このスワップ取引は相対での取引が原則となります。


今回の記事では、デリバティブ(金融派生商品)の3類型である先物取引、オプション取引、スワップ取引について説明しました。

現在はデリバティブはそれ自身が投資の対象となっていますが、本来リスクをヘッジするためのものです。

デリバティブの本質をリスクし、賢くリスクをコントロールすることが投資においては必要となります。


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ブログ管理人:田中ゲイリー

東京都出身。東京大学卒業後、都内金融機関にて投資銀行業務に従事。その後、米国へ留学しMBA(経営学修士)を取得。現在は、上場企業にて経営企画業務に従事する傍ら、副業としてITスタートアップにてCFOとして関与。
Blog Author: Gary Tanaka

CFO of the IT venture company (Data Analytics)

Finance / Corporate Planning / Ex. Investment Banker

University of Tokyo (LL.B) |

University of Michigan, Ross School of Business(MBA)

Tokyo, Japan

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