外MBA留学のメリットを述べる記事は巷にあふれているので、今回の記事では海外MBAを検討する際のポイント5つについて説明します。
既にご認識されていることもあるとは思いますが、これらのデメリットを上回るメリットを海外MBA留学に見いだせるかどうかが、本気でMBA留学を目指すかどうかの判断材料になってきますので、参考にしていただければ幸いです。
1. コストが非常に高い。
2. 2年間職場を離れることになる。
3. 準備が大変である。
4. MBA卒業後にリスクテイクをしにくくなる。
5. MBAで得たものをビジネスの現場で活かすことは難しい。
別記事でもまとめましたが、2年間の学費で1,000万円以上の学費がかかります。
この学費は年々増加しており、特に上位校になるほど高くなる傾向にあります。
上位校を目指す場合では1,500~2,000万円で加えて、2年間での海外での生活費が必要になり、トータルで3,000万円程度が必要になります。
この金額は地方であればマンションが買えるレベルであり、MBAを目指す年齢である30歳前後で耳を揃えて用意するのは非常にハードルが高いです。
また、私費の場合では、仕事を退職、若しくは求職することで無給の状態が2年続くということにもなります。
私は幸運にも社費留学のチャンスを頂くことができましたが、30歳の時点で3,000万円の貯金を自力で達成するということは、一般的な企業ではほぼ不可能だと思います。
周囲では奨学金制度や、両親への借入を駆使してなんとか調達するという方が多かったです。
(上位校は奨学金制度も充実しているので、必ずしも留学前に全額を揃えておく必要はありません。)
私自身、留学中に一番不安を感じたのは、「2年間私が留学している間に、同世代はもっと成長しているのではないか?」というものでした。
私は留学前の職場が投資銀行であり、業務を通じて金融のダイナミズムを肌で感じる機会があったのですが、残念ながらMBA留学中に同様の興奮や胃痛を感じられるような機会はありませんでした。
MBAの授業自体は非常にクオリティが高く、ケーススタディを通じて疑似体験できるような工夫はなされていますが、授業はあくまで授業であり、仕事を通じてしか味わうことのできないような修羅場や刺激を味わうことはできません。
ほとんどの大学では、Action-Based Learningのような形式の授業に参加する機会や、課外活動としてのConsulting Projectへの参加の機会などがありますが、仕事と同じようにフルコミットして参加するということはなかなか難しい面もあり、実際の業務と同じ経験をするということはできません。
留学している2年間の間、同世代のライバルはビジネスの最前線で更なる成長を遂げているかもしれません。
2年間リアルなビジネスの世界を離れるということが、自分のキャリアにとって影響があるのかを考えるということは必要なのではないかと思います。
私もそうでしたが、海外留学経験のない人間にとって、TOEFL, GMAT, Essay, Interviewの準備は非常に骨の折れるプロセスです。
上位校を目指すには、TOEFLでは100点以上、GMATでは700点以上が最低でも必要になりますので、それを短期間で取るというのは決して容易ではありません。
また、その受験勉強を、仕事や家庭と両立しながら進めていくということが必要になります。
私も留学が決まるまでの1年間は、平日は業務前2時間・業務後3時間、土日は1日あたり15時間勉強するという生活をずっと続けていました。
社費留学であり受験に失敗できないというプレッシャーもあり、留学準備の1年間は大好きなアルコールを1滴も呑むことはできませんでした。また、周囲では、プライベートとの両立が上手くいかず、配偶者やパートナーとお別れをせざるを得なくなったという事例もゼロではありませんでした。
そして、受験準備が辛くなり、MBA留学自体を諦める方や、志望校のランクを下げるという方を、予備校の知り合いでも複数見てきました。
考え抜いた上で留学をしないという選択肢は一つありだと思いますが、せっかく数千万円のコストをかけて留学するのであれば、安易に志望校のランクを下げるというのは卒業後の選択肢という観点からもお勧めしません。
(卒業後の転職先を探すにしても、コンサルや投資銀行などでは面接の際に一定レベル以上の大学といったカットラインを設けていることが多いです。)
上位校を目指すのであれば、1~2年間プライベートの充実は一切諦めるくらいの覚悟が必要になるということに留意が必要です。
上述の通りMBA留学のコストは非常に高く、私費での留学の場合は、留学費用を奨学金や親族への借金を原資として留学する学生が多くなります。
MBA卒業後の進路としては、かけてしまったコストを回収しようと、コンサル・投資銀行・GAFA・総合商社など、卒業後1年目からある程度の高給を保証してくれる企業へ転職するという意思決定をする学生が大半になります。
余程ご家庭が裕福ではない限りは、卒業してすぐに起業やベンチャー企業での活躍を目指すということは取りにくい選択肢となります。
また、社費留学の場合は、返済義務のある会社がほとんどですので、数千万円を一括で返済してまで派遣元を辞めるというというのは難しくなります。
MBAは未来のビジネスリーダーを養成する士官学校であるはずなのに、卒業後にリスクを取る日本人留学生があまりいないという点は一つ認識しておかなければならない問題であると思います。
(ちなみに、先日みずほ証券が、留学から帰国後すぐに辞めた社員に対して、留学費用3,000万円の返還を求めた訴訟でみずほ証券側が全面勝訴しました。一定期間内の返還義務は適法なものとして判例も確立されています。)
このポイントは周囲のMBAホルダーを見ての個人的な感想であり、自戒の念を込めて書いていますが、MBAを取得することで「自分が何か特別かである」かのような錯覚を持ってしまいがちという点が挙げられると思います。
私の周囲でも、帰国後の職場で横文字や理論ばかりを並べて、煙たがられるという方もいらっしゃいました。
MBAを通じてある程度の経営理論や仮説思考力は身に着きますが、実際の業務で成果を出すには、現場との適切な距離感の維持であったり、実際に現場で汗をかくといったことが必要となります。
しかし、残念ながら、MBAを卒業することでプライドばかりが高く、そういった地道な努力をないがしろにする方が一定の割合でててくるという点は否めないと感じています。
また、MBAは様々な経営理論に関する知識を与えてくれますが、実際のビジネスでは理論だけで成功を収めることはできず、行動を起こす前に十分な市場調査や分析をするということが必要となります。
また、時と場合によっては、頭でっかちになりすぎず、勘や哲学といったものをベースとするような意思決定も実際のビジネスの現場では必要になります。
理論や知識はあるのだけれど、MBAを経ることで、リアルと理論のバランスを見失いがちな方が一定割合ででてくるという点には留意が必要です。
そして、社費派遣でのMBA留学の場合に覚悟しておいてほしい点としては、卒業して帰国してもMBAの知識を活かせるチャンスは現在の日本企業には多くないということです。
私の周囲の社費派遣生も、帰国したら留学前の職場に戻ることになったケースも多く、年功序列的色彩の強い企業では、留学前と職位が変わらず下働きという点に思うところを感じている方は多いのが実情です。
MBAホルダーを帰国後どのように活用・育成するのか、そのノウハウが確立していない点が日本の社費留学制度の課題だと思います。
今回の記事ではMBAを検討する場合に留意すべきポイント5つについて説明させていただきました。
これ以外にもデメリットを挙げようとすれば個別の事情に応じて色々と思いつくでしょう。
海外MBA留学を目指すのであれば、受験勉強などの準備を始めるまえに、メリット・デメリットを棚卸して天秤にかけるというステップが必要になるのではないかと思います。
今回の記事が、海外MBA留学を検討されている方の参考に少しでもなれば幸いです。
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