検討しているプロジェクトが1つのみであれば、IRRが割引率よりも大きければそのプロジェクトは実施するべきということになります。
しかし、実際のビジネスの世界では、複数のプロジェクトを同時並行で検討していて、1つのプロジェクトを採用すると、他のプロジェクトは実行できずどちらか一方を選択しなければならないということがあります。
そのような場合はどのように投資の意思決定をすればよいでしょうか?
具体的な事例で見てみましょう。
あなたは2つのプロジェクトAとプロジェクトBのいずれを採用すべきか検討しているものとします。
下記の2つのプロジェクトのうちどちらのプロジェクトを採用すべきでしょうか?
プロジェクトAは資本の機会コスト(割引率)を35%上回る高いIRRを実現しています。
感覚的にはプロジェクトAを採用したくなるかもしません。。
しかし、このIRRはたったの1,000ドルに対してのみ適用されるものであり、プロジェクトAを実行したとしても株主価値は304ドルしか増加しません。
一方で、プロジェクトBのIRRは割引率を10%しか上回りません。
しかし、プロジェクトAの10倍の投資規模のプロジェクトであり、株主価値は870ドル増加することになります。
IRRの増加と、NPVの増加のいずれを優先するべきでしょうか?
このようにどちらのプロジェクトを採用するかが悩ましい場合、プロジェクトAとプロジェクトBの差分のIRRを計算し割引率と比較することで、どちらのプロジェクトを採用すべきか決定することができます。
上記の表より、差分のIRRは22%となり、割引率である15%を上回ります。
この場合は、プロジェクトBを採用すべきであると考えられます。
なぜなら、プロジェクトBはプロジェクトAと差分のプロジェクトの合成と考えることができるからです。
※ プロジェクト A + (プロジェクトB - プロジェクトA) = プロジェクト B という風に考えてみるとわかりやすいと思います。
つまり、プロジェクトBを採用することによって、割引率15%を上回るプロジェクトAと差分(プロジェクトB - プロジェクトA)の2つのプロジェクトを採用するということになります。
もし、差分のIRRが割引率を下回るようであれば、プロジェクトBではなくプロジェクトAのみを採用すべきということになります。
なぜならば、プロジェクトBを採用することによって、割引率を下回る差分のプロジェクトを採用してしまうことになるからです。
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