ファイナンスの基本的な概念として「現在価値」という用語があります。
もし、同じ100万円をもらえるとしたら、10年後にもらうよりも今日もらう方が良いと思います。
一方で、今日の100万円をもらうのと、1年後の103万円をもらうのでは判断が難しいかもしれません。
今日100万円もらって5%で運用できる自信があるのであれば、1年後の時点では105万円になるので、1年後に103万円をもらうよりも正しい選択ということになります。
今日の100万円と、1年後の103万円のどちらがよいのかを比較する為に、それぞれの選択肢を「現在時点だといくらになるか?」という時点を統一して比較することを「現在価値」といいます。
キャッシュの「現在価値」を理解する上では、以下の原則を覚えておく必要があります。
① キャッシュの流入が増加すればするほど、価値は大きくなる
② キャッシュの流出が減少すればするほど、価値は大きくなる
③ 将来よりも直近で発生するキャッシュの方が、価値は大きくなる
④ キャッシュの流出タイミングが直近よりも将来になるほど、価値は大きくなる
⑤ リスクが小さくなるほど、価値は大きくなる
おそらく、上記の5原則は違和感なく理解いただけるものと思います。
しかし、現実には、上記の5法則は他の前提が全ての場合であり、それぞれの法則が相反する場合があります。
例えば、キャッシュの流入が増加するけれども発生時期が遅くなる場合や、より直近で発生するけれどもリスクが高い場合などです。
ビジネスパーソンが投資の意思決定をする際には、その投資が割にあうものなのか、複数ある選択肢のなかでベストなのかを検討する必要があります。
それぞれの金額、発生時期、リスクを反映して「現在価値」に割り引くことで、現在時点であればいくらの価値があるかを比較することで解決することができます。
もし、今日100ドルを受領する場合、その現在価値はそのまま100ドルとなります。
その100ドルを10%の利回りで、12年間複利で運用した場合はいくらになるでしょうか?
100 ドルを1年間10%の利回りで運用すると、100 × (1 + 0.1)= 110ドルとなります。
この × (1 + 0.1)の部分を12回繰り返した金額が答えとなります。
つまり 100 × (1 + 0.1)^12 = 313.84 となります。
一方で、単利で運用した場合は 100 + 100 × 0.1 × 12 = 100 + 10 × 12 = 220になります。
金利がプラスである場合は、複利で運用した方が単利で運用するよりも、将来受け取る金額が大きくなります。
よく、経済や投資の評論家が複利で運用しましょうというのはこの理由によるものです。
将来価値をFV(Future Value)、現在価値をPV(Present Value)、運用期間をn年、年利をrとした場合には以下の関係が成り立ちます。
FVn = PV × (1 + r)^2
上の例でいうと、
313.84 = 100 × (1+0.1)^12 ということになります。
計算式の利息の計算部分である(1 + r)^n の位置を変えると
PV = FVn × 1 / (1 + r)^n
100 = 313.84 × 1 / (1+0.1)^12 という形で表現できます。
次の記事では例題を示してみたいと思います。
次の記事:第05回
前の記事:第03回
目次:MBAファイナンス
Comments