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MBAファイナンス㉖:株式による資金調達

更新日:2021年4月9日


前回までは上図の②と③の「投資にかかる意思決定」について説明してきました。

今回からは①と④の「財務にかかる意思決定」つまり「資金調達」について説明していきたいと思います。

投資を実行するには、資金が必要であり、企業のマネージャー(特にCFO)は投資家との適切なコミュニケーションを行い、投資に必要な資金を調達するということが求められます

外部からの資金調達の手段としては、主に株式によるもの、負債によるもの、両者の中間であるハイブリット型の調達がありますので、それぞれの特徴について説明していきたいと思います。




まずは、株式による資金調達です。

一般的に、創業まもない企業というのは実績もなく、外部の投資家から資金調達をすることは困難です。

起業間もない場合は、起業家自身が自己資金で出資するか、家族や友人から調達することが一般的です(これをFamily とFriendsの頭文字をとってFFマネーと言います)。


企業としての実績ができたり、ビジネスモデルに共感してくれる投資家が現れた時に、少数の投資家に対して株式を調達して資金を調達することを「私募調達」といいます。

私募とは少数の投資家から調達するという意味で、調達の条件については発行する企業と投資家の間で交渉がなされるため、迅速かつ柔軟に調達することができます。


少数から調達する私募に対して、広く投資家から調達することを「公募調達」といいます。

所謂、IPOと呼ばれる株式市場への上場などがこれに該当します。

尚、IPO(Initial Public Offerings)は上場する際の発行のことを指し、上場した会社が株式を発行する場合はSEO(Seasoned Equity Offerings)と言います。




企業が利益を上げた場合は、配当を支払って株主に対して支払うことが一般的ですが、将来の成長の為に配当を支払う代わりに投資に回すことがあります。

この企業自身の利益による調達資本内部留保といいます。

企業自身が稼いでいる利益のため調達という言葉は違和感があるかもしれませんが、本来であれば株主に帰属するべき利益を、支払わずに企業内にとどめているという風に理解すれば調達であるというふうに理解していただけるのではないかと思います。


一見するとこの内部留保は無料で調達しているように見えますが、その資本コストはゼロではありません

株主としては、配当を受け取っていれば他の投資に回すことができた訳ですので、株主にとっての機会コストが内部留保の資本コストになります。

経営者としては、利益を内部留保し社内の投資に回すことについて株主に納得させるコミュニケーションが必要になります。


内部留保は株式の発行は伴いませんが、株式(Equity)による資金調達としては、最も規模の大きいものです。

投資家かからの私募調達やIPOができるような企業は非常に限られています。アメリカでは、そのような資金調達ができない企業の資金調達の70%はこの内部留保が占めているといわれています。





ベンチャーキャピタルとは、主に高い成長率を有する未上場企業に対して投資を行うことでハイリターンを目指す投資会社のことを指します。

ベンチャーキャピタルは、投資に関する意思決定などのファンド運営を行うGP(General Partners)と、ファンドに出資するLP(Limited Partners)から構成されます。

ベンチャーキャピタルが投資するのは、創業間もないIT企業やバイオテック、その他の新しいサービスを提供する企業への投資を行います。

ベンチャーキャピタルは投資先が上場すれば、投資金額が何倍にも何十倍にもなり、多額の利益を手にすることがあります。しかし、その裏には多数の投資の失敗があるということに留意する必要があります。

ベンチャーキャピタルの投資は、10社投資して9社が潰れても、1社が上場すればトータルでは利益が残るといったハイリスクハイリターンの投資なのです。




ベンチャーキャピタルでファンドの運営を行う人をベンチャーキャピタリストといいます。

彼らは単にベンチャー企業に投資するだけでなく、投資後も投資先に対するモニタリング、監督や助言を行い、投資先企業の株主価値向上や上場に向けた助言を行います

株主という立場にとどまらず、投資先の取締役になるなど、ハンズオンで株主価値の向上に向けた様々なサポートを行っていきます




ベンチャーキャピタリストの投資のタイミングは様々なパターンがあります。

それぞれのタイミングは、製品の開発前の「シード」、製品のプロトタイプはあっても黒字化前の「アーリー」、黒字化を達成したばかりの「ミドル」、事業成長の見通しが立ち拡大路線に移行する「グロース」と呼ばれます。ファンドによって、どのタイミングでの投資を得意にしているか、それぞれ特徴があります。

「シード」で投資したベンチャーキャピタルが、後のステージで追加投資を行うこともありますが、投資先の業績が芳しくないなどIPOに向けた可能性がないとジャッジした場合は追加投資を見送るといったシビアな判断をすることもあります。

ベンチャー企業が順調に上場に向かっていく限りにおいては、「シード」で投資したベンチャーキャピタルと投資先の関係は長期のものとなります。

ベンチャー企業がベンチャーキャピタルから資金を調達する場合は、ファンドの特性など投資条件以外の要素を十分に検討し、そのベンチャーキャピタルから資金調達することが成長に資するかを十分に検討しなければなりません




日本でも、ベンチャーという言葉が一般的になり、若者の起業も増えてきたことで、モーニングピッチのように起業家とベンチャー投資家が交流する機会は増えてきています。

しかし、ベンチャー投資を行う主体は少なく、起業家がベンチャーキャピタルにアプローチするという機会は残念ながら十分ではありません。

ベンチャーキャピタルには、非常に多くのベンチャー企業からの提案資料が持ち込まれており、また属人的なベンチャー業界における人脈やネットワークというのも重要になります。


ベンチャー企業が順調に成長していくと、ベンチャーキャピタルが投資先にもたらすバリュー(資本、助言、信用、ネットワーク)というものも徐々に逓減していきます。

「シード」から投資しているベンチャーキャピタルのリターンよりも、「グロース」で投資したベンチャーキャピタルのリターンが小さくなるのは、IPOの時期が近づくにつれてリスクとベンチャーキャピタルの提供する価値が小さくなっていくことによるものです。


ベンチャー企業が苦難を乗り越え、無事にIPOを果たすことができれば、ベンチャーキャピタルは無事に投資した資本をリターンと共に回収することができます。これを、「Exit(出口)」と言います。

昨今では、IPOではなく大企業の売却によるExitのケースも増えています

ベンチャーキャピタルが回収した資金はGPへの報酬やLPへの配当として支払われ、また別のベンチャー企業への投資への資金と回流していくことになります。

こうして、ベンチャー投資資金が循環して、新たなベンチャー企業への成長をベンチャーキャピタルが助けるというサイクルが回っていくのです。



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ブログ管理人:田中ゲイリー

東京都出身。東京大学卒業後、都内金融機関にて投資銀行業務に従事。その後、米国へ留学しMBA(経営学修士)を取得。現在は、上場企業にて経営企画業務に従事する傍ら、副業としてITスタートアップにてCFOとして関与。
Blog Author: Gary Tanaka

CFO of the IT venture company (Data Analytics)

Finance / Corporate Planning / Ex. Investment Banker

University of Tokyo (LL.B) |

University of Michigan, Ross School of Business(MBA)

Tokyo, Japan

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