EVAについて理解を深める為、例題を解いて見ましょう。
あなたは、CEOで新しいプロジェクトを検討しています。
初期投資として660百万円が必要ですが、結果として今後5年間にわたって175百万円のキャッシュフローが生まれるとします。
投資した機械は5年後に60百万円で売却できるものとし、償却は定額法によってなされるものとします。
プロジェクトの資本コストが12%とする場合の毎年のEVAを計算して、プロジェクト期間中の全てのEVAの現在価値を計算してください。
① まずは毎期の減価償却費を求める必要があります。
5年後の残価は60百万円ですので、660 - 60 = 600百万円が償却可能額となり、それを5年で割った120百万円を毎期償却していくことになります。
② 次にキャッシュフローから減価償却費を引いてNOPAT(税引後利益)を求めます。
③ 次に、期初の投下資本額を求めます。初期投資額は660百万円ですので、1期目の投下資本は660百万円で、2期目以降は前期の期初の投下資本から償却分の120百万円が減少していくことになります。
④ 次に期初の投下資本に割引率の12%を乗じて、投下資本の金額を求めます。
⑤ NOPATから資本コストを引いて毎期のEVAを求めます。
各期のEVAは下記の表のとおり推移しており、その全てのEVAの現在価値は4.9百万円となります。
この値はプロジェクトのNPVを求めた時の値と一致することになります。
上の表より、各期のEVAはプロジェクトでの序盤ではマイナスであり、後半になるにつれてEVAは大きくなっていきます。
この理由は、プロジェクトの序盤では投下資本の償却が進んでおらず、結果として資本コストの金額が大きく見積もられてしまうからでです。
このままですと、経営陣が中長期的な投資を回避するという問題が引き起こされてしまいます。
そうした問題を避ける手法としては下記の解決策が考えられます。
減価償却費と資本コストという投下資本に紐づくコストをプロジェクト期間中に毎年同額になるように割り当てる手法です。
プロジェクト初期の高い資本コストを相殺させるために、プロジェクト序盤の減価償却費を低下させるのです。
ここでは、Sinking Fund Depreciation Methodという手法について説明します。
Sinking Fund Depreciation MethodはEVA以外では使われるとはないので、以下はお時間ある方のみ読んでいただければ結構です。
Sinking Fund Depreciationは住宅ローンの返済をイメージしていただければいいと思います。
住宅ローンの月々の支は返済期間中一定だとしても、その内訳はタイミングによって異なります。
返済の序盤は、元本の金額が大きく返済額の大半は利息に充当されることになります。徐々に元本額が返済されるとともに利息の割合が減少し、返済の後半では月々の返済額のうち元本返済に充当される割合が増加していきます。
Sinking Fund Depreciationでは、元本の弁済=減価償却、利息=資本コスト と同様に考えて、各期の減価償却と資本コストの合計額が一定額になるような金額を求めていきます(住宅ローンの場合の月々の支払額です)
当初に660百万円を年利12%で借り入れて、5回にわたって金利と元本弁済をする前提の支払額を金融電卓で求めます。この例では、5回目の支払額と一緒に60百万円が支払われることになります。
金融電卓で計算すると X = 173.64百万円 と求まります。
1年目の資本コストは79.2百万円ですので、1年目の減価償却費は173.64-79.2=94.44となります。
2年目の資本コストは、(660-94.44) x 12% = 67.87となり、2年目の減価償却は173.64 - 67.87 = 105.77となります。
これを5年分繰り返したものが下記になります。
Sinking Fund Depreciation Methodを採用することにより、各期のEVAが均等になるように調整されます。
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