企業が投資を複数の設備投資を検討する際、どちらの設備も耐用年数が同じ期間であればトータルでかかるコストの比較は簡単です。
しかし、必ずしも検討している設備の耐用年数が同じとは限りません。
一般的に、高価な設備の投資ほど耐用年数が長く、安価な設備の投資ほど耐用年数が短いものです。(安価な設備の方が耐用年数が長いのであれば、そちらを投資すればいいだけの話です。)
耐用年数が異なる際に、どのように比較するのかを簡単な例題をベースに検討しましょう。
資本の機会コストが5%の時、以下の機械Aと機械Bのいずれを採用するべきでしょうか。
■ 機械A
初期投資 15百万円
ランニングコスト 2百万円/年
耐用年数 2年間
■ 機械B
初期投資 20百万円
ランニングコスト 1百万円/年
耐用年数 3年間
機械Aの寿命までにかかる全てのコストの現在価値は18.7百万円、機械Bの寿命までにかかる全てのコストの現在価値は22.7百万円です。
この場合、トータルのコストが少なくてすむ機械Aを導入すべきでしょうか?
もちろん、答えは「NO」です。なぜならば、機械Bが3年もつのに対し、機械Aは2年しかもたないからです。
この場合の解決策としては、比較する機械同士の耐用年数の最小公倍数を求め、その最小公倍数の期間内にかかるトータルのコスト同士を比較します。
そうすることで、2つの機械を同じ期間で比較することができます。
2年間と3年間の最小公倍数は6年です。機械Aと機械Bの必要コストの推移は下記の通りとなります。
6年間のトータルコストの現在価値ををそれぞれ比較すると、機械Aは51.1百万円、機械Bは42.4百万円となります。
したがって、機械Bに投資した方が割安ということになります。
次にちょっと応用問題を解いて見ましょう。
上の例題では簡単に耐用年数同士の最小公倍数を求めることができました。
しかし、機械Aの耐用年数が13年、機械Bの耐用年数が28の時どうすればいいでしょうか。最小公倍数は364年ですが、364年ものコストの現在価値を計算することは、できないことはないですが、現実的ではないと思います。
この問題への解法としては、①耐用年数期間のトータルコストの現在価値を求め、②その現在価値相当の金額を耐用年数に渡って支払うべき金額を計算します。
例えば、機械Aのトータルコストの現在価値は既に18.72百万円と求まっています。
18.72百万円を支払う代わりに、今後2年間に毎年支払うべき金額を求めればいいということになります。つまり、現在18.72百万円支払うことと、今後2年間に毎年支払うことが等価といえるかということになります。
この考え方を「等価年間コスト(EAC, Equivalent Annual Cost)」といいます。
計算には金融電卓が必要になりますが、資本の機械コスト5%と2年を入力すると、機械AのEACは10.07百万円であるということが求まります。
一方で、機械Bの3年間のコストの現在価値は22.72百万円であり、そのEACは8.34百万円となります。
EACの比較からも機械Bを導入すべきという結論になることがわかります。
EACというのは馴染みのない概念かもしれませんが、これはリース料の計算に近いものです。
リースの場合、初期投資を行うのはリース会社です。リース機器のユーザーは、リース会社が支払った初期投資と資本の機械コストを耐用年数にわたってリース料という形で支払っているのです。
(リース料にはメンテナンス料やその他のコストも含まれます。また、耐用年数経過後もリース料を支払って再リースを行うのが一般的です。)
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