新しいプロジェクトへの投資の意思決定をする際、そのタイミングが悩ましいということがあります。
例えば、新しいプロジェクトで製造する商品への需要が増加傾向にあり、その需要の増加率が減少傾向にある場合を考えてみましょう。
一般的に、需要が大きければ大きいほど、より多くの収入が見込めプロジェクトのNPVがより大きくなることが想定されます。
製品への授業が一定で増加するのであれば、投資タイミングを後ろ倒しにすればよいということになりますが、ここで悩ましいのは需要の増加率が時間の経過とともに先細りになっていくということです。
このような事例は、林業における収穫のタイミングの意思決定においても存在します。
木は年を重ねるにつれて成長するものですが、その成長率というのは年を重ねるごとに小さくなっていきます。
ご案内の通り、木は一度収穫してしまうとなくなってしまいます。
木の成長のスピードだけでなく、収穫時点でのニーズを考慮して、収穫のタイミングを決定するということが利益を最大化する上で重要になります。
あるケースをみてみましょう。
このケースにおいてNPVtは t 年後に収穫した場合のNPVを意味します。そして、資本の機会コストは10%と仮定しています。
どのタイミングで投資すべきかについては、NPVtを現在価値に割り引いて、どの時点で最大の現在価値を求めることができるかで判断することができます。
このケースでは、NPVtは時の経過と共に大きくなっていきます。
しかし、その現在価値は3年目と4年目に収穫した場合で同じになります。これはなぜでしょうか?
それは、3年目と4年目の間でのNPVの成長率が、投資の機会コストである10%と等しい値になるからです。これによって、NPVの成長率が割引率によって打ち消されてしまうのです。
このケースでは、3年目までは収穫を待つべきであり、4年目までには収穫すべきという結論になります。
このケースが意味することは、NPVの緩やかな成長が見込まれている場合、そのプロジェクトの実行は「NPVの成長率と割引率が一致するタイミング」で実行すべきということになります。
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