最後に3つのフォームの効率性についての復習です。
ウィークフォームの効率性:過去の金融商品の価格は、将来の金融商品の価格を予想することに関しては役に立たたないというものです。この効率性のもとでは、過去の価格のトレンドから将来の価格を予測するテクニカル分析は有用でないとされます。
セミストロングフォームの効率性:現在の金融商品の価格は、全ての公開情報を速やかに反映する。この効率性のもとでは、公開情報によるファンダメンタル分析は有用ではないとされます。
ストロングフォームの効率性:現在の金融商品の価格は、インサイダー情報を含めたすべての情報が価格に反映されている。この効率性のもとでは、インサイダー取引ですら市場を上回るリターンを上げることができません。
※ウィークフォームとセミストロングフォームに関しては、先行研究によりその効率性の存在が支持されていますが、ストロングフォームについては証明がなされていません。
こうした効率性が資本市場に備わっているとすると、金融商品の価格は以下の性質を備えているものということができます。
全ての入手可能な公開情報を反映している。
新しい情報が公開されると、速やかにその情報に従って調整される。
その金融商品を保有することで得られるキャッシュフローの現在価値を公正な推定である。
投資家は、公開情報に基づいて取引を行っても市場のリターンを上回るようなリターンを獲得することはできない。(その投資家が他のマーケット参加者が認識していないような情報や洞察を持っていない限り)
現在のファイナンス理論は、効率的な資本市場を前提としています。
しかし、これらのマーケットの効率性にも以下のような例外はあります。
小型株効果:小型株は大型株に比べて平均的に高いリターンが観測されることがあります。
1月効果:1月前半の株価は他の月に比べて高いリターンが観測されることがあります。
低PBR株:PBRの低い「バリュー株(割安株)」の方が、「グロース株(成長株)」に比べて高いリターンが観測されることがあります。
これらの例外も常に生じるわけではなく、例外の存在がマーケットに知られることによって例外自体生じなくなる方向に効率性が働くのです。
過去3回の記事を総合すると、マーケットの効率性は程度の問題であると言えます。
効率性がどこまで働くかは、得られる情報の利用可能性や信頼性に依存しますし、情報開示や市場の公正性に関する規制も影響を与えます。
聡明な投資家であれば、簡単にはマーケットのリターンを上回ることはできないということを理解しています。彼らはそれらを理解した上で、投資を生業として血のにじむような努力をしているのです。
もしあなたがCFOであれば、効率性のあるマーケット投資家がそう簡単に安価な資金調達の機会を提供してくれると考えるべきではありません。自分たちの会社が、どのような水準であれば資金調達ができるのか、あるいは資金調達をすべきなのかを慎重に検討していく必要があります。 次の記事:第42回
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