次は、別の例題を解いてみましょう。
あなたは自動車メーカーのCFOです。
製造プロセスを効率化するため、既存の製造ラインを入れ替える為に、新しい自動化された製造ラインを検討しています。
以下の前提条件を読んで、新しい製造ラインを導入すべきかどうかを検討しましょう・
・既存の製造ラインは3年前に導入されたもので投資額は500百万円です。
・既存の製造ラインの税法上の償却期間は5年間で、定額法により償却するものとします。(すなわち、500÷5=100百万円ずつを毎年減価償却費として償却し、5年後の簿価はゼロとなります。)
・既存の製造ラインは6年以上使用することは可能ですが、売却した際の売却対価はゼロとなります。
・既存の製造ラインを現時点で売却した場合は、40百万円で売却が可能です。
・新ラインの導入により、製造コストは現状の510百万円から200百万円に減らすことができます。しかし、新ラインの導入に際しては、0年目にワンタイムで20百万円の運転資本の増加が必要となります。
・新ラインの導入には1,000百万円が必要であり、その償却は以下の償却率にて償却がされていくことになります。
・新ラインの耐用年数は6年で、6年後の簿価はゼロとなります。
・自動車メーカーは既存のビジネスで利益を上げており、その税率は40%で資本コスト(割引率)は15%となります。
新ラインの償却スケジュール
年度 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 6年目
償却率 20% 32% 19.2% 11.52% 11.52% 5.76%
※新ラインは1年目で1,000 × 20% = 200百万円を償却することになります。
新ラインを導入すべきかを判断するという場合は、新ラインを導入した場合と導入しない場合のキャッシュフローをそれぞれ計算することになります。
その際には、それぞれを比較した場合にはどのように税金に対してインパクトがあるかを考慮する必要があります。
導入する場合 1,000百万円
導入しない場合 0百万円
差額 1,000百万円
影響する年度 0年目
税金への影響 → なし
導入する場合 -200百万円
導入しない場合 -510百万円
差額 310百万円
影響する年度 1年目、2年目、3年目、4年目、5年目、6年目
税金への影響 → 新ライン導入により税金増加
売却価格 40百万円
簿価 200百万円
売却益(損) -160百万円
影響する年度 0年目
税金への影響 → 新ライン導入により税金減少
旧ラインの減価償却費が発生するのは、新ラインが導入されなかったときのみです。一方で、新ラインを導入した場合は旧ラインの減価償却費と減価償却費による節税効果は発生しないことになります。
旧リストの償却額 100百万円/年
影響する年度 1,2年目
税金への影響 → 新ライン導入により税金増加
年度 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 6年目
償却額 200 320 192 115.2 115.2 57.6
影響する年度 1年目、2年目、3年目、4年目、5年目、6年目
税金への影響 → 新ライン導入により税金減少
年度 0年目 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 6年目
償却額 20 -20
影響する年度 0年目、6年目
税金への影響 → なし
ステップ1からステップ6の結果をまとめて、税金額を計算しキャッシュフローの計算をしたものが下記の結果となります。
このキャッシュフローを企業の割引率である16%で割り引くとその正味現在価値(NPV)は-16.5百万円となり、内部収益率(IRR)は15.3%となります。
NPVがマイナスであり、IRRがその割引率よりも低いということであり、新ラインへの投資はすべきではないという結論になります。
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