企業はビジネスに必要な資金を投資家市場、すなわち資本市場より調達します。
その際に、企業は投資家たち出し抜いて、本来支払うべき金利よりもより安い利回りで資金を調達することは可能でしょうか?
この際に意識しなければいけないのが、資本市場が株式や債券などの金融商品の価格を決定する際に機能する「資本市場の効率性」です。
今回の記事では、「資本市場の効率性」について説明します。
金融商品の価格を左右するものは何でしょうか?
金融商品の発行体に関するニュース、産業全体に関する規制の動向、その国の経済に関する情報など様々な情報が影響を与える可能性があります。
例えば、Appleが最高益更新のニュースを発表したと仮定しましょう。
この後、Appleの株価はニュースの発表によって上がるでしょうか、それとも下がるでしょうか?
一見すると、最高益は良いニュースですので、株価は上がりそうと思われるかもしれません。
しかし、この場合に必ずしもAppleの株価は上がらないのです。
もし、公表された最高益以上の利益をあげると投資家が期待していて、最高益であっても期待外れであったとした、ニュースの公表によってAppleの株価は下がるかもしれません。
一方で、投資家が発表された水準の利益を事前に予想していたとしたら、そのニュースは既に株価に織り込まれており、ニュースが公表されても株価は変化しないかもしれません。
株価を左右しうるニュースや財務情報を分析し、時には情報を生み出す役割を果たすキープレイヤーが「証券アナリスト」です。
彼らの仕事は、「適切と考えられる株価水準」を予想することです。
彼らは「適切と考えられる株価水準」を分析する為に、テクニカル分析とファンダメンタル分析という2つの異なるタイプの手法を用います。
以下では、証券アナリストが用いる2つの分析手法について説明します。
テクニカル分析は過去の株価をチェックし、その株価のパターンから将来の株価を予想するという手法です。
こうしたパターンの一つがヘッドアンドショルダーズトップです。
このパターンでは下記の図のように、3つの山と2つの谷があり、真ん中の山が一番高い山となっています。
テクニカル分析によって証券アナリストはこうしたパターンを認識すると、図のAの時点で株式を購入し、Bの時点で株式を株式を売却するように助言します。
証券アナリストは、株価がヘッドアンドショルダーズトップのパターンを形作るよう、「Aの時点の株価で上昇に転じ、Bの時点の株価で下落に転じるに違いない」という予想を行うのです。
このアナリストの予想は機能するでしょうか?
テクニカル分析は過去の株価のパターンを分析する非常に簡単な手法で、分析にコストはかかりません。
多くの投資家はテクニカル分析の手法を採用しています。
つまり、他の市場参加者が既にこのパターンに気づいているかもしれないのです。
証券アナリスト分析が正しいとすると、その助言に従った投資家は株式の売買によって利益を得ることができるはずです。
しかし、そのような絶対に儲かるパターンを見つけることに成功した人々はそんな秘密を他にしようとはしないでしょう。
つまり、この予想は絶対にあたるものではないということです。
日本人の個人投資家は世界的に見て、テクニカル分析を好む傾向にあると言われています。
確かに、過去の実績は未来を占ううえで大きなヒントになると思いますし、多くの人がテクニカル分析を信じることで、分析した通りの結果になることもあるでしょう。
テクニカル分析が有効かどうかという点については、神学論争はありますが、筆者は有効ではないというスタンスをとっています。
株式市場において、絶対に儲かるパターンを見つけるというのは非常に困難です。
なぜならば、株価自身に値動きのパターンについて形状記憶のような記憶力はなく、株価を決めるのはその株を株を売買する投資家だからです。
ある株価の1日の平均的な上昇率が過去1年間0.05%だとして、その日に株価が上昇するか下落するかは概ね五分五分なのです。
(ある日は0.2%上昇して、ある日は0.1%下落するとしても、その株価は平均的に0.05%上昇する株価という評価になるのです。)
このように、株価の値動きにはパターンがなく、過去の変動パターンとは関係ないとする理論をランダムウォーク理論といいます。
ランダムウォーク理論が正しいとすると、将来の価格を予測するうえで過去の実績は将来の株価を予測するうえで有効ではなく、過去の価格変動をパターン化して投資判断の材料にするテクニカル分析の有効性は否定されるのです。
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