CAPM(資本資産価格モデル)により、株主資本コストは下記のように表現できます。
リスクフリーレート:米では財務省短期証券や国債、日本では10年国債等の現在の利回り
エクイティリスクプレミアム: 過去の株式マーケット全体のリターンのリスクフリーレートに対する超過リターン
β: βはマーケット全体の株式が1%変化した時に、特定の銘柄が何%変化したかを測る指標。実務では、5年月次のβか2年週次のβを用いることが多い
リスクフリーレートは、アカデミックな世界では、米財務省短期証券利回りを使用しますが、ビジネスの世界では中長期の国債利回りを使用することが一般的です。日本では10年物長期国債利回りという風に覚えていただいて構いません。
また、リスクフリーレートは現在のものを用いて、エクイティリスクプレミアムは過去実績のものを用いることに注意してください。
以下、例題で実際に計算してみましょう。
上場企業であるA社の株式のβが0.8で、10年物日本国債利回りが0.1%、エクイティリスクプレミアムが8%の時の株主資本コストを求めてください。
株主資本コスト = リスクフリーレート + エクイティリスクプレミアム × β
= 0.1 + 8% × 0.8 = 6.5%
次に負債コストの計算方法について説明します。
負債のコストを計算する際は、その企業の有利子負債の加重平均により計算します。
企業の負債が以下のような構成の場合を考えてみましょう。
買掛金 10百万円
社債 40百万円、最終利回り(YTM) 6.0%
銀行借入 30百万円、利率7.0%
ドル建債 20百万円、利率2.6%、1年後満期。
※ 1年後は現在よりも5%ドル高(円安)方向に進むことが予想され、企業の税率は40%と仮定します。
社債と銀行借入のコストは、それぞれ記載の通り6.0%と7.0%です。
問題はドル建て債の利回りです。20百万円をそのまま円で借りていれば2,000×2.6%=52万円が1年後に支払う利息ですが、ドル建債の場合はドルで返済する必要があります。
1年後は5%ドル高に進みますので、利息も元本も円の場合よりも105%支払う必要があります。従ってこのケースでのドル建て債の利回りは
2.6% x 1.05 + 5% = 7.73% となります。
また、買掛金については利息が発生しないため、負債コストの計算には含めません。
負債コストの計算には含めませんが、仕入先がリスクを負っていることになり、潜在的に仕入価格のなかで考慮されていることになります。
次に加重平均により負債コストを計算します。
トータルの有利子負債は40+30+20 = 90百万円です。
(6 × 40/90) + (7 × 30/90) + (7.73 × 20/90) = 6.72% となります。
支払い利息は、税務上損金として取り扱われます。
したがって、負債への利息を支払うことによって、税金を減らすという節税メリットを享受することができるのです。
6.72%の利息を支払うことによって、6.72% × 40% = 2.69%分の節税効果が生じることになり、この部分は負債コストから除かれることになります。
したがって、このケースでの負債コスト(税引後)は
6.72% - 2.69% = 4.03%となります。
次の記事では、株主資本コストと負債コストから企業全体の資本コストを計算していきます。
次の記事:第52回
前の記事:第50回
目次:MBAファイナンス
Comentarios