第二次世界大戦の焼け野原から、日本は奇跡とも評されるほどの復興を果たしました。1970年代には高度経済成長を謳歌し、日本も先進国の仲間入りをはたしました。
1979年にはアメリカの社会学者エズラ・ヴォーゲルにより「ジャパン・アズ・ナンバーワン」という著作が出され、勤勉で学習意欲の高い日本人は世界でも有名な存在となりました。(ヴォーゲルは見習うべきではない点についても言及していますが。)
1970年代~1990年代と、日本人は非常に勤勉に働き、アメリカ人よりも多額の金額を貯蓄し、より多くの金額を投資へと回しました。
しかし、アメリカ人はより高い生活水準を享受し、実質的にアメリカ人の方がより豊かな生活を送っていました。
(私もアメリカに留学していましたが、日本人は本当に勤勉に働きますし、勉強する国民性だということを実感しましたが。プレゼンテーションやディベートでは、予習もしていないネイティブに負けるのですが。)
日本人の一人当たり労働時間はアメリカ人の140%、日本人の一人当たり物的資本はアメリカ人の122%あったにもかかわらず、日本の一人当たりGDPはアメリカに対して77%に過ぎませんでした。
より勤勉に働きより多くの投資を行っていた日本人よりも、アメリカ人の方がより豊かな生活をできたのはなぜでしょうか?
それは、アメリカでは人ではなく「お金がより勤勉かつ効率よく働いた」からです。
アメリカの企業は「利益率」と「株主価値」をより重視する経営を行っていたのです。
また、国全体での投資という視点でみても、よりリターンの高い領域への効率的な資金を配分していたのです。
1980年代、アメリカ企業が大規模なリストラを実行することもあったのに対し、日本企業は成長と雇用の維持を重視する経営を行いました。
一見冷酷に見えるアメリカ企業の手法は批判され、日本の経営スタイルは称賛を受けました。
特に、日本的経営の「終身雇用」「年功序列」「企業内組合」は「三種の神器」と呼ばれました。
終身雇用を前提として、企業は新卒で採用した従業員を、教育コストをかけて優秀な人材へと育てていきました。年功序列は社員の忠誠心と仲間意識を高め、企業内組合により労使協調で戦略を実現していく。
こうして育成した優秀な社員が定年まで一致団結して働くことで、日本企業の成長を支えていたのです。
しかし、残念ながら日本企業のこの「三種の神器」が機能し続けることはありませんでした。
1990年代のバブル崩壊以降、日本は長くトンネルの見えない不況とデフレに苦しむことになります。
一方のアメリカは、企業の苦境の際はリストラを行うものの、結果としてリーマンショックの2008年まで低い失業率を実現することができたのです。
そして、アメリカは結果として世界一の経済大国としてのポジションを確固たるものとしたのです。
成長フェーズにある経済においては、かつての日本のような従業員重視の経営スタイルは良かったのかもしれません。
しかし、変化の多い現代においては、よりリターンの高いエリアに資金と労働力というリソースを柔軟に配分する経営が求められるのです。
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