次に将来のキャッシュフローの計算をするときに、インフレの影響をどう反映すべきか考えてきましょう。
インフレとは貨幣の価値が減少することです。
新興国など経済成長が想定されている国においては、急速なインフレが予想されることがあります。
この場合に、プロジェクトを割引率で割引く場合にインフレをどのように加味すべきでしょうか?
答えは、「常に一貫性を保つ」ということです。
名目キャッシュフローを用いるのであれば、割引率は名目割引率であるべきす。
もし、実質キャッシュフローを用いるのであれば、割引率は実質割引率であるべきということになります。
例を見てみましょう。
MBAの卒業生は700万円を年間の給料として受け取ることができるとします。
今後毎年3%のインフレが予想される時に、大学生の受け取ることのできる給料は下記となります。この場合今後2年間の名目賃金はどのように増加していくでしょう?
年度 現在 1年後 2年後
実質賃金 700万円 700万円 700万円
名目賃金 700万円 700 x (1.03)=721万円 700 x (1.03)^2 =742.63万円
このように名目賃金の増加率はインフレ率と等しくなります。
この場合、割引率とインフレ率には下記のような関係が成り立ちます。
先ほどの例題で、実質割引率が2%となる場合に、今後キャッシュフローがいくらになるかを考えてみましょう。
実質のキャッシュフローを実質割引率で割り引くと、
700 / (1.02) + 700 / (1.02)^2 = 1,359.09万円となります。
一方で名目のキャッシュフローを割り引く場合は名目割引率を求める必要があります。
名目割引率=(1+0.02) x (1+0.03) -1 = 0.0506 = 5.06%
この名目割引率で名目キャッシュフローを割り引くと、
721 / (1.0506) + 742.63 / (1.0506)^2 = 1,359.09万円となり、
名目割引率を用いた場合と同じ現在価値を求めることができます。
プロジェクトの終了時に、プロジェクトの為に購入された設備は不要となります。
プロジェクトの終了後、設備が売却できるのであれば、その売却により得られるであろうキャッシュフローは考慮する必要がありますが、その際に留意すべきなのは税金の取り扱いです。
貸借対照表上は簿価が計上されているのに対し、簿価とは異なる売却で売却された場合は、売却益(もしくは売却損)が計上されます。
そして、売却益が計上された場合は、売却益に対する課税が発生することになります。
設備売却に伴うキャッシュフローは下記のステップで計算することになります。
① 売却益(売却損)を計算する
② 売却益に税率を乗じて税金額を計算する
③ 売却価格から税額を控除する
例えば、簿価20百万円の機械をプロジェクト終了時に100百万円で売却した場合、税率が34%とすると。
売却益 = 100 - 20 = 80百万円
税金額 = 80 x 34% = 27.2百万円
売却に伴うキャッシュフロー = 100 - 27.2 = 72.8百万 と求めることができます。
税金はあくまで売却益にかかるという点に留意が必要です。
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