前回の記事の通り、経営者の評価を利益や部門の規模によって行ってしまうと、経営者のインセンティブと株主のインセンティブが一致しないという事態が引き起こされます。
経営者と株主の向かう方向性を一致させるためには、付加価値による評価が必要であり、その手法の一つが EVA(経済付加価値,Economic Value Added) です。
EVAは下記の計算式により計算することができます。
前の記事の事例では、毎期のキャッシュフローは15百万円、初期投資額は150百万円、資本コストは15%でした。
これをEVAの計算式にあてはめると
EVA = 15 - 150 × 15% = -7.5百万円となり
企業は年間7.5百万円ず価値を棄損しているということになるのです。
この年間のEVAを割引率で割り引いて現在価値をと
-7.5 ÷ 15% = - 50百万円となり、NPVと一致します。
EVAは年度毎に計算される指標であり、減価償却や資本コストを考慮した後の経済的利益となります。
EVAは会社単位だけでなく、部門や部署単位でも用いることが可能となります。。
EVAを導入することには以下のメリットがあります。
・より細分化された単位での意思決定が可能になる
・評価や報酬をEVAとリンクさせて運用することが可能となる
・マネージャーや従業員は、自分の所属する部署や部門のEVAを最大化しようとするインセンティブが働く。
一方で、EVAには危険もはらんでいます。
どのような報酬システムも従業員の日々の行動に影響を与えるものです。
従業員とすれば、自分の賞与や報酬がEVAによって決まるとすれば、EVAに対して非常に敏感になります。
EVAの副作用としては、EVAを短期で減少させるような中長期の投資を回避するインセンティブが働くということです。
短期では利益が出ず中長期では大きな果実が見込めるプロジェクトがあったとしても、短期での資本コストの増加を嫌って投資を見送るという方向に促すという可能性があるのです。
アメリカでは一定期間ででの転職が一般的ですし、中長期的な利益による恩恵を自分たちが得られるかわかならないと分かれば、マネージャーはそのような投資をしようとは思わないでしょう。
このようなEVAの副作用を回避するため、企業はストックオプションなど、マネージャーや従業員の報酬と中長期の経済的付加価値を一致させる仕組みを導入しています。
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