過去2回の記事で、株式と負債による資金調達について説明しました。
近年は資金調達の手法として、株式と負債の双方の性質をもったハイブリッド証券というものも登場しています。日本では「メザニン(中二階の意味)」という言葉の方が一般的です。
ハイブリッド証券の代表的なものが「転換社債」です。その名の通り社債ではありますが、一定の条件のもとで投資家は、その社債を株式に事前に決められた比率で転換することができます。
転換できる権利がある分、通常の負債よりも利息が抑えられるというメリットが発行する側にはあり、投資する側には株式に転換することでキャピタルゲインを得られる可能性があるというメリットがあります。
もう一つのハイブリッド証券が「優先株式」です。優先株式はその名の通り株式で、何が優先するかというと、配当を受け取る権利です。普通株式の株主は、会社の業績が悪い時は配当を受け取ることができませんが、優先株式の株主は事前に約束された配当を受けることができます。
なお、補足情報ですが、優先株式への配当支払いができなかったとしても、デフォルト(債務不履行)とはみなされないとされています。
株式の権利というのは持分比率に応じて平等というのが原則ですが、優先株式のように、資産の分配に関してその株主に優先的な権利を与えることは可能です。
ただし、優先的な権利とは金銭的な権利に限りません。例えば、株主として株主総会で意思決定をする際の議決権を特定の株主に対してだけ増やすということも可能です。Facebookのように、創業者が上場後も意思決定をコントロールできるよう、創業者に特別な議決権を与えるケースというのも珍しくはなくなってきています。
日本では上場会社でのそうした株式の発行は2014年のサイバーダインのように事例は多くはありませんが、創業者のリーダーシップが重要な若い企業においては、金銭的な権利と議決権とを必ずしも一致させないような仕組みというのも今後増えていくかもしれません。
転換社債と優先株式はハイブリッド証券のもっともシンプルな形式の一つです。
しかし、ハイブリッド証券の世界は奥が非常に深く、組み合わせによっては様々なパターンがありえます。ハイブリッド証券を発行できるような企業は限られており、仕組みが複雑になるほど発行のコストは高くなるというハードルはありますが、企業の財務戦略を見るCFOなどの経営者は、様々なパターンを組み合わせて、その企業にとって何が最も効果的な資金調達化を検討していかねばなりません。
次回からの記事では、債券についてより踏み込んだ説明をしていきます。
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