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MBAファイナンス㉟:投資機会と企業価値の関係

更新日:2021年4月21日


今回の記事では、企業の投資機会がどのように株価や企業価値に影響を与えるかについて説明したいと思います。


まずは、企業の価値とは何かについて解説したいと思います。

企業の価値は、次の2つの価値を合計することによって計算することができます。


① 現存する資産より生じる全ての将来キャッシュフローの現在価値

② 将来の投資機会から生じる将来キャッシュフローの現在価値


言い換えると、

①は既に存在する資産の価値、

②は将来の成長機会の現在価値(PVGO: Present Value of Growth Opportunities)ということができます。


スタートアップでは、現状のキャッシュフローはそれほどではなくても高い株価となることがあります。

この場合、①は小さくても、投資家は②の将来の投資機会とそれによる利益の増を期待して投資の意思決定をしているのです。



成長フェーズにある企業は、正のPVGOがあるものと評価されています。


PVGOが正ということは、その企業は将来、投資家の要求リターンを上回る超過リターンを生み出すことができるということを意味します。


一方で、配当や利益の成長は必ずしもPVGOが正であることを意味しません


既存ビジネスより生み出された利益を新たなプロジェクトへの再投資に回せば配当や利益は成長しますが、そのプロジェクトが投資家の要求利回りを超えるリターンを生み出すとは限らないです。



企業が既存のビジネスより生み出された利益を配当に回すべきか、配当せずに将来の成長に向けた投資に回すべきかというのは難しい質問です。

残りの記事では、そうした意思決定について、必要な考え方について説明したいと思います。


まずは、それらを考える上で必要となる用語を覚えていただきたいと思います。




つまり、配当の金額をDIVとすると、EPSとREは以下の関係で表すことができます。




つまり、再投資比率 = RE / EPS と表現することができます。




つまり、配当性向と再投資比率の関係は下記の通り表すことができます。




将来の成長機会への投資が株価の上昇につながるかどうかついて、具体例をベースに考えてみましょう。


・A社のEPS : 10万円 (ここではA社のEPSは永久に10万円と仮定します。)

・株主の要求利回り:15%

・新規投資によるリターン:15%

・配当性向:100% (つまり、再投資比率0%はゼロであり配当の成長はありません。)

この時の株価は、EPSを株主の要求利回りで除することによって、

10 / 0.15 = 66.7万円となります。

再投資比率は0%であるためPVGOは0です。


もし、再投資比率が40%とすると株式にどのような影響があるでしょうか?


この場合の配当は、10 × (1 -0.4) = 6万円となります。

企業が利益を配当せずに再投資することで、利益がどの程度成長するかというと、15% × 40% = 6% 成長することになります。


翌年の利益は 10 + 10 × 40% × 15% = 10.6万円


その次の年の利益は 10.6 + 10.6 × 40% × 15% = 11.236万円となります。


この場合の配当の増加率を考えてみますと、

翌年の配当は10.6 × 60% / 6 = 106%

その次の年の配当は11.236 × 60% / (10.6 × 60%) = 106%となり、

配当も利益の成長率同様に6%ずつ毎年成長していくことになます。


さらに、前回の記事で説明しましたゴードンモデルより、配当と資本コスト、成長率より株価を以下の式で表すことができます。


株価 = 配当 ÷ (資本コスト - 配当成長率) = 6 / (15% - 6%) = 66.7万円


再投資比率を 40%に引き上げても、株価は上昇しませんでしたが、これはなぜでしょうか?


再投資によるリターンと株主の要求利回りが同じため、再投資を行っても新たな超過リターンを生み出すことがなかったのです。




上記の例題1の条件から、唯一新規投資のリターンを25%変更した場合どうなるでしょうか?


・A社のEPS : 10万円 

・株主の要求利回り:15%

・新規投資によるリターン:25%

・配当性向:60%


この場合の利益成長率は、25% × (1 - 0.6) = 10%となります。

また、この時の理論株価は、 6 / (15% - 10%) = 120 万円となります。

当初の株価は66.7万円なので、PVGOは120 - 66.7 = 53.3万円となります。


新規投資によるリターン25%が株主の要求利回り15%を超過するため、配当に回すことなく留保して再投資することで株価を向上させることができます。


成長絵フェーズにある企業の場合は、株主の側としても配当として受け取るのではなく、企業内に留保して新たな投資へと使われることを望むのです。



最後に、新規投資が株主の要求リターンを下回る場合を考えてみましょう。


・A社のEPS : 10万円 

・株主の要求利回り:15%

・新規投資によるリターン:10%

・配当性向:60%


この場合、利益の成長率は10% × 40% = 4%となります。

そして、この時の理論株価は、 6 / (15%-4%) = 54.6万円となります。


54.6 = 66.7 + PVGOですので、PVGO = -12.1万円 とマイナスの値となります。

この例では、新規投資は株主価値にとってネガティブな影響を及ぼしています。

つまり、株主の要求リターンを下回る再投資をおこなうことは、株価を毀損するという結果になっています。


では、このマイナスのPVGOを回避するにはどうすればよいでしょうか?


答えは、留保することなくすべてを配当として株主に支払うのです。

その場合の理論株価は、10/15% = 66.7万円となり、PVGOもゼロとなります。


株主の要求リターンを満たすことができる投資機会がないのであれば、利益は全て配当に回して、株主により魅力的な他の企業に投資してもらうということが正しい選択となるのです。



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ブログ管理人:田中ゲイリー

東京都出身。東京大学卒業後、都内金融機関にて投資銀行業務に従事。その後、米国へ留学しMBA(経営学修士)を取得。現在は、上場企業にて経営企画業務に従事する傍ら、副業としてITスタートアップにてCFOとして関与。
Blog Author: Gary Tanaka

CFO of the IT venture company (Data Analytics)

Finance / Corporate Planning / Ex. Investment Banker

University of Tokyo (LL.B) |

University of Michigan, Ross School of Business(MBA)

Tokyo, Japan

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