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執筆者の写真Gary Tanaka

MBAファイナンス㊺:資本市場線

更新日:2021年4月9日


分散投資によるリスクの減少を最大化するには、投資家はマーケット全体と同じ構成のポートフォリオを持つ必要があります。


マーケット全体と同じ構成のポートフォリオとは、株式だけでなく債券・不動産・その他の投資対象の加重平均によって構成されたポートフォリオです。


では、この分散投資効果によりリスクの減少したポートフォリオは安全でしょうか?


答えはNoです。分散投資効果によってリスクを減少しても、投資市場全体に影響を与えるマクロ経済要因の不確実性に伴うリスク(金利の変化、景気動向、政情)までを取り除くことはできないのです。


ポートフォリオ内の金融商品の数と標準偏差の関係を示したのが下記の図となります。




投資家が十分に分散されたポートフォリオへの投資を行ったとしても、投資家が取り除くことのできないリスクのことを分散不能リスクといいます。


分散不能リスクはマーケット全体に影響を与えるリスクのことであり、マーケットリスクとも呼ばれます。



このマーケットリスクを減らす方法はないのでしょうか?

マーケットリスクを減らす方法は、米財務省短期証券(日本国債)のようにリスクフリーの金融商品(「安全資産」)に投資するのです。



では、こうしたリスクフリーの金融商品をポートフォリオに組み込んだとき、効率的フロンティアにはどのような影響があるでしょうか?

もし、リスクフリーではない金融商品によってマーケットポートフォリオを構成したとしても、そのポートフォリオのリスク、すなわち標準偏差は正となります

このマーケットポートフォリオと安全資産を組み合わせると、そのリスク・リターンは変化します。


例えば、マーケットポートフォリオのリターンが12%、標準偏差が20%で、安全資産のリターンが4%、標準偏差がゼロの時を考えてみます。


Rp:安全資産を組み合わせたポートフォリオのリターン、σp:マーケットポートフォリオの標準偏差、 Wf: 安全資産の占める割合、Wm: マーケットポートフォリオの占める割合とすると、安全資産を組みわせた場合のリターン・リスクは以下のようになります。


Rp = Wf ×0.04 + Wm × 0.12

σp = Wm × 0.20

Wf = 1- Wmであり、Wm = σ/0.20ですから、

Rp = 0.04 + 0.4σp という形に変形することができます。


従って新たなポートフォリオのリターンは、切片が0.04%(安全資産のリターン)で、マーケットポートフォリオの標準偏差σpに比例する1次方程式という形で表現することができます。


これらの関係性を一般化したものが下記の図になります。


切片のRfと、効率的フロンティアと直線の接点M、Bをつなぐ直線は、安全資産を含めない場合の効率的フロンティア(赤い曲線部分)よりも左上にあり、リスク・リターンが従来の効率的フロンティアより改善しているということがわかります。


この従来の効率的フロンティアと安全資産を組み合わせることにより表現される新たな効率的フロンティアを「資本市場線」といいます。


投資家はマーケットポートフォリオのみの場合よりも、安全資産を組み合わせることによってより魅力的なリスク・リターンを享受することができます


上の図では、投資家のポートフォリオがMとRfの間にある場合はマーケットポートフォリオへの投資を減らしてその分を安全資産への投資に回しているという状態を表現しています。一方で、接点MとBの間にある場合、投資家はリスクフリーレートで資金を調達してその分のマーケットポートフォリオに追加している状態を表現しています。この場合、リスクは増加しますが、その分より大きなリターンを得ることができる状態となっています。




投資家は株式と債券のいずれを購入すべきでしょうか?

その質問に対する原則的な答えは、「どちらも保有するべき」ということです。

そして、投資家が保有すべき株式と債券の割合は、その投資家のリスクに対する許容度によって決まります。

リスク許容度が非常に大きければ、資金を調達して株式に投資するということもあるかもしれません(上の図のM-Bの状態)。


いずれにせよ、より魅力的なポートフォリオを構築するためには安全資産を組み合わせ、資本市場線上にあるようなポートフォリオを構築すべきということがこの記事の結論となります。


なお、マーケットと同じポートフォリオを自身で組み適宜リバランスするのは非常に手間のかかる作業です。そのような場合、マーケット全体を模したインデックスファンド(例えば、アメリカでいうとS&P500)を活用するのが投資初心者にとっては手間がかからずハードルが低くなります。こうしたインデックスファンドは、マーケットの状況に合わせて機械的にリバランスされるためファンドマネージャーの人件費がかからず、非常に手数料が安価な商品となっています。

※この記事は特定の金融商品の購入を薦めることを意図したものではありません。



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ブログ管理人:田中ゲイリー

東京都出身。東京大学卒業後、都内金融機関にて投資銀行業務に従事。その後、米国へ留学しMBA(経営学修士)を取得。現在は、上場企業にて経営企画業務に従事する傍ら、副業としてITスタートアップにてCFOとして関与。
Blog Author: Gary Tanaka

CFO of the IT venture company (Data Analytics)

Finance / Corporate Planning / Ex. Investment Banker

University of Tokyo (LL.B) |

University of Michigan, Ross School of Business(MBA)

Tokyo, Japan

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