今回から数回に分けて、海外MBA留学のメリットをまとめたいと思います。
今回の内容はあくまで、私のRossでの実体験に基づくもので、メリットの順位付等は人それぞれだと思いますので、あくまで参考として読んでもらえれば幸いです。
1回目は、経営に関する体系的な知識の習得についてです。
多くの志願者にとて、経営に関するナレッジを取得するということが第一の目的であると思います。
しかし、MBAで習う知識のほとんどは既に論文等で公表されていたり、書籍化されているものです。
また、授業で扱うようなケースについても一部書籍化されたものがあります。つまり、MBAの知識は書籍や論文を通じて独学で学ぶということも可能です。
では、なぜそうした知識を敢えて高い授業料を払ってまで海外MBAという場で学ぶのかという観点から説明したいと思います。
1. 知識を効率的に習得できるよう考えられたカリキュラム
2. 双方向の授業スタイル
3. 教授とTAの献身的なサポート
4. 実務家によるレクチャーとQ&A
5. Action Based Learning
以下は、MBAの必修科目の例です。順番は、履修した順番通りに並べています。
MBAの必修科目
· コミュニケーション
· 会計学
· 経済学(ミクロ・マクロ)
· 統計学
· ファイナンス
· 経営戦略
· 管理会計
· マーケティング
· オペレーション
· リーダーシップ
この順番を見てどのような感想をお持ちでしょうか。
これらの科目はそれぞれが独立していますが、実は各科目が有機的に結びついており、習得する順番についても考え抜かれているものなのです。
MBAの授業は「コミュニケーション」の授業からスタートします。
この授業を通じて、アメリカ式・MBA式の授業スタイルについて学び、海外からの留学生は「MBAではクラスに貢献できない人間は評価されない」という大学からの強いメッセージを理解することになります。
最初はお客様気分の生徒も、シビアな競争を通じて目の色が変わります。
そして同時に、いかに相手に対してリスペクトを持った形で意見を伝えるか、プレゼンテーションやディスカッションの質をお互いに高め合うのかというテクニックを学びます。
「コミュニケーション」の授業が、その後の学びの質を上げるブースターとしての役割を果たすのです。
多くの同級生が、MBAプログラムで一番印象に残った必修科目は「コミュニケーション」の授業と評していました。
そして、その後に学ぶ科目が「会計学」「統計学」「経済学」です。
ソフトスキルを学ぶ「コミュニケーション」の授業から、数学的素養が求められるこれらの科目という順番には違和感があるかもしれません。
しかし、この3つの科目は、その後で学ぶ「経営戦略」「マーケティング」「オペレーション」のメイン科目の前提となる知識を与えてくれるのです。
「会計学」では、企業の数字について基礎的な内容を学びます。企業が経済活動を通じてどのように利益を生むのかを、財務諸表に記載される数字を通じて理解することになります。
それ以降の科目のケースで、「利益」という共通言語を理解する必要があるため、最初に「会計学」の授業を学ぶということに意味があるのです。
「経済学」の授業では、グローバルな視野での外部環境を掴む「マクロ経済学」の知識と、経済主体の意思決定がどのようになされるのかという「ミクロ経済学」の知識を学びます。
この授業を通じて、いかに外部環境を分析するのか、置かれた外部環境のなかで自社や競合がどのようなアクションを取ることになるかを学ぶのです。
これらの知識は、「ストラテジー」や「マーケティング」を解く上での基礎となります。
次に、「統計学」の授業では、意志決定のプロセスにデータを用いる際の基礎知識を学びます。
現在のMBAのケースは単なる読書のように、定性的な情報を読んだり、簡単な計算式を解くだけで結論を下すだけでははありません。
定性的な情報に加えてデータを与えられ、与えられたデータを加工し分析することで最適解を導くということが求められます。
同じフレームワークやアプローチを採用したとしても、異なる解が導かれることになります。
意思決定に用いるデータをどのようにハンドリングするのかを、手を動かしながら学ぶのです。
「経営戦略」「マーケティング」「オペレーション」はMBAのメイン科目となります。非常に骨の折れるなケースが与えられ、それまでの授業の学んだ知識を駆使し、様々な視点から分析することが求められます。
多くの学生にとって、「経営戦略」と「マーケティング」が期待値の高い科目です。
「経営戦略」や「マーケティング」などのメイン科目での学びが最大化するように、全体のコースが設計されているのです。
最後に必修科目の締めくくりが、「リーダーシップ」の授業です。
それまでの授業は主にハードスキルの授業で一定の答えのあるものですが、「リーダーシップ」の授業では答えのない問いに対して向き合うことになります。
それまでに学んだ知識は一旦脇に置いて、自分がビジネスリーダーであったらどう判断すべきか、どのようにリーダーとして貢献するのかを考え、自分と深く向き合うことになります。
必修科目の最後に、「自分がどのようなリーダーを目指したいか」を考え抜くことが、夏休みのインターンシップや選択科目のポートフォリオを検討する際に大きな示唆を与えてくれるのです。
※母国語以外の言語(英語)で学ぶことの意義については、別の記事にて言及いたします。
MBAにおける双方向とは、「教授と生徒」「生徒と生徒」の2つの意味があると思います。
授業は日本のように教授が一方的に教えるスタイルではなく、教授と生徒の対話を通じて進んでいきます。
原則コールドコール形式(教授が回答者を指名)で、「君はどう思う?」という形でいきなり指名されるので、教授の質問に答えるためには事前にしっかり予習することが必須となります。
また、教授の質問に対して自分の回答を答えるだけでは平均点しか得ることができず、より一層踏み込んだ貢献が求められます。
例えば、教授が用語を説明した時に、自分の過去のビジネスでの経験をシェアしたり、他のクラスメイトの意見に対して異見を求めることが評価されます。
クラスに貢献するために、生徒は講義や議論にしっかり集中してキャッチアップしようというという姿勢で臨むということになります。
授業の貢献は必ずしも講義中の発言に限りません。授業の後に調べ物をしてそのアウトプットをシェアしたり、苦手な生徒に対して勉強会を開催するといったことも評価されます。教授が生徒を評価するだけでなく、クラスメイト同士でも評価する仕組みがあるので、生徒同士がお互いに教えあいながら高め合っていく仕組みが組み込まれているのです。
MBAのクラスは、生徒が特定のバックグラウンドに偏らないよう、多様性を意識して構成されています。それぞれの必修科目に知見を有するクラスメイトが必ずおり、彼らの経験や知見が共有されるので、授業で学習した理論を実務的な目線からも捉えることができるようになります。
これらの双方向性を通じて、生徒が予習をして、講義に集中し、講義後の学習を促すようなインセンティブが働いているのです。
(海外MBAの生徒はGMATである程度のスコアをクリアしているので、一定の地頭力はあるので、ペーパーテストや課題では大きな差がつかないという事情もあります。)
日本の大学との大きな違いは、教える側の手厚いフォローにあります。
必修授業では1クラスの人数は40名程度ですが、原則的に教授は生徒の顔と名前、経歴を覚えています。生徒のバックグラウンドに応じて質問する相手とレベルを選んで、授業のディスカッションがスムースに回るように配慮されています。
また、教授が授業以外で学生に割いてくれる時間が日本の大学に比べて圧倒的に長いです。週2回それぞれ2~3時間のオフィスアワーに加えて、それ以外の時間でもミーティングをセットしてくれたり、グループディスカッションに見回りに来てくれるなどの時間を割いてサポートしてくれます。メールで質問をする場合も、ほぼ必ず当日中には返信をくれます。
また、中間試験の出来が悪かった場合などは、生徒が授業についていけないということのないように、個別の補習等でもサポートしてくれます。
Teaching Assitsant(TA)についても、その科目を専攻している大学院生が教授以上に時間を割いてサポートしてくれます。年齢が近い分、TAの方が些末な質問もしやすいので、私は質問のレベルに応じて教授とTAのオフィスアワーの利用を使い分けていました。
教授自身もクラスの最後に評価をされて、評価によっては高給のポジションを失う可能性があるので、生徒の学びを最大化しようと必死でサポートしてくれるのです。
海外MBAの授業の最大のメリットは授業のなかで、その分野の最前線で活躍しているゲストスピーカーを招いてくれることです。
ケースの問題を解き、諸理論を理解したタイミングで定期的に、世界の一流企業で働く卒業生をゲストスピーカーとして招いてくれます。
卒業生にとっても母校で授業
それまでに授業を通じて習得した知識が実際に実務の現場でどのように活用しているのかを実際に聞いて、疑問に思った点を直接質問することができます。
授業の一環ではあるのですが、母校愛のある卒業生のゲストスピーカーは在校生と本音で議論してくれるので、知識をより一段深く腹落ちさせることができます。
海外MBAのメリットは、授業で習得した知識を実際のプロジェクトを通じて活用する機会があることです。
私の通ったRossでは約2か月間の「MAPプロジェクト」を卒業要件として受けることになります。実際の企業の課題を解決するコンサルティングプロジェクトを通じて、教授陣のサポートも借りながら知識を実務を問題解決に活かすという経験を在学中にすることができます。
(必修科目以外にも、選択科目やクラス活動など、さらなるAction-Based Learningの機会を希望すればチャレンジすることができます。)
いかがでしょうか。海外MBA留学では、こうした考え抜かれた効率的なカリキュラムによって、世界・経済・社会の外部環境を分析する諸理論、経営の各機能分野の網羅的な理解が可能になるのです。
※上記は個人的な経験に基づいたものですので、実際の授業スタイルやカリキュラムについては、受験される大学のHPやOB等を通じてご確認ください。
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