同じ企業が発行する債券であったとしても、その最終利回り(YTM)は満期までの期間によって異なります。
一般的に、満期までの期間が長い債券ほどYTMは高くなります。
(満期までの期間が短い債券の方がYTMが高くなる場合もあります。)
利回り満期の関係をグラフで表すと、長期債の利回りが短期債の利回りを上回り、曲線は右肩上がりになります。この関係を「利子の期間構造」といい、そのグラフのことを「利回り曲線」といいます。
利回り曲線を確認することで、マーケットがどのように将来の金利を評価しているかのヒントを得ることができます。
事例をベースに利子の期間構造について考えてみましょう。
ある企業が今後の資金計画の見通しを検討したところ、今後2年間に渡り100万円のキャッシュを社債で調達する必要があることがわかりました。
CFOによると、満期2年の社債を発行した場合の最終利回りは8.243%で、満期1年の社債を発行した場合の最終利回りは7%ということが分かっています。
満期2年で調達する場合と、満期1年で調達し、1年後に返済した後で満期1年で再調達する場合のどちらの調達を選ぶべきでしょうか?
この問題では、1年毎に調達した場合、2回目の利回りはわかりません。
答えとしては、1年後に調達した場合の利回り次第ということになります。
アプローチとしては、①満期2年の社債で支払うべきトータルの金額を算出し、②1年間後に調達した場合の利回りがいくら以下なら、トータルでの支払いを抑えることができるかを考えることになります。
最終利回りが8.243%なので、2年債の場合のトータルでの支払いは、全ての利息の支払いが満期のタイミングで支払われると考えると、
1,000,000 × (1.08243)^2 = 1,172,655 円となります。
一方で、1年債の場合は現在の利回りが7%であり、1年後に満期1年で借り入れた場合の金利をrとすると
1,172,655 = 1,000,000 × (1.07) × (1 + r ) の式を満たすrを求めることになります。
この式を解くと、r = 9.5% となります。
r < 9.5%を満たす場合は、1年毎に借り入れた方がよく、r>9.5%の場合は2年債で借り入れた方がよいとうことになります。
もし、上記のケースで3年債の利回りが9%であるとしましょう。
この場合マーケットが3年目に想定している利回りrは
(1.09) ^ 3 = (1.08243) ^2 × ( 1 + r) の式を解いて、r=10.53%と求めることができます。
それぞれの金利を示した利回り曲線(イールドカーブ)で示すと、満期までの期間が長くなるにつれて最終利回り(YTM)が高くなっていることがわかると思います。
このカーブは、マーケットが将来の短期金利が上昇するという予想をしていることを示しています。
一方で、利回り曲線が右肩下がりになる場合というのもあります。
これは、どのようなことを示しているのでしょうか?
このような場合、マーケットが、不況による利回りの低下や資金需要の減退などの長期での金利の低下を予想しているということになります。
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