次に、最終利回りと実現利回りの違いについて説明したいと思います。
最終利回りは前の記事で開設しましたが、「満期まで」保有した場合に実現する利回りです。
一方の保有期間利回りは、購入した債券を常に満期まで保有するとは限らないことから、途中売却した場合を想定して、保有期間中にどの程度の利回りを得られたか図る利回りで、下記のように計算されます。
保有期間で金利が変動すると、期末の債券価格は金利とは逆方向に変動することとなります。
この年度毎の保有期間利回りは、毎年債券価格の変化に応じて変化していきます。
次に具体例で考えてみましょう。
金利が4%で、年間の利子が40万円、満期5年の債券をパーで購入した時(つまり、額面金額の1,000万円)で購入したと仮定します。1年後、金利が4%のままであった時、債券価格は変動しませんので
1年後の債券価格=1,000万円
1年間の保有期間利回 = 40 + (1,000 – 1,000) / 1,000 = 4% となります。
では、1年後に金利が5%に上昇した時の保有期間利回りはいくらになるでしょうか?
1年後の債券価格は、
PV = 40/(1.05) + 40/(1.05)^2 + 40/(1.05)^3 + 40/(1.05)^4 + 1,000/(1.05)^4
= 964.84 となり債券価格は下落します。
この場合の保有期間利回りは、
{40 + (964,84 – 1,000)} / 1,000 = 0.48% となります。
4%分のクーポンの支払を受けた一方で、金利の上昇によって3.52%相当のキャピタルロスが発生することになります。
このよう満期まで待たずに売却を想定する場合は、債券価格に影響を与える将来の金利の動向について慎重に見極める必要があります。
このケースの場合、債券価格の減少によるキャピタルロスのリスクは、債券を満期まで保有することで回避することができるでしょうか?
その答えは、「キャピタルロスの実現は避けることができる」が、「保有する債券の価格が減少した事実は避けることができない」というものです。
金利が5%に上昇したことで、他の債券に投資すれば5%の金利を得られるチャンスが他にあるのに、満期まで保有し続けることでそのチャンスを逃しているという事実からは逃れることができないのです。
次に同じ前提で、1年後に金利が3%に低下した場合を考えてみましょう。
1年後の債券価格は、
PV = 40/(1.03) + 40/(1.03)^2 + 40/(1.03)^3 + 40/(1.03)^4 + 1,000/(1.03)^4
= 1036.68 となり債券価格は上昇します。
1年間の保有期間利回りは、
(40 + 1036.68 – 1000) / 1000 = 7.67% となります。
債券を保有している投資家にとっては、金利の低下は債券価格の上昇をもたらし、保有期間利回りを向上させる結果となるのです。
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